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お店の清潔感覚の問題であって、言い訳にはならない。 きれいなお店にするということは、インテリアデザインに凝るということとは別の話である。
ラーメン店の場合、高級感はいらないし、とくにしゃれたデザインにする必要もない。 むしろ個性を出すなら、東南アジアや台湾などのエスニックな雰囲気などもいいだろう。
店舗デザインについてはとくに注文はないが、ただ、清潔感を維持することと、シンプルではあっても居心地感がいいということに、十分配慮してほしい。 とくに女性客は、入りやすさと居心地のよさを重視するからだ。
女性客が入りやすいお店とは、男性客にとっても感じのいいお店ということになる。 ここがラーメン店の急所といってもいいだろう。
ラーメン店は、だれもがすぐに開業できる小さな飲食店の代表である。 ラーメンとギョーザ単品で売るお店なら、調理経験はまったく必要ない。

あるていど特訓すれば技術的なハードルは簡単にクリアできる。 ニーズが分厚いから、立地条件にもあまり左右されない。
大衆店だから、店舗の内装費も安くてすむ。 だから、あらゆる飲食業種のなかで、ラーメン店はもっとも新規出店が多い。
昔から、脱サラや転職組が最初に飛びつく業種でもあった理由は、きわめて明快だ。 ところで、いま挙げたラーメン店のメリットはすべて、飲食店をチェーン化するための条件でもある。
いまは、ファミリーレストランやファーストフードショップ、コーヒーショップや居酒屋、丼専門店など、いろいろなチェーン店がひしめいている時代だが、なかでもラーメン店の出店はひときわ目につく。 調理技術という点では、他の業種チェーンも似たり寄ったりだが、立地の柔軟性と投資額の低さ、ニーズの分厚さでは、ラーメン店は群を抜いている。
脱サラや転職組が真っ先に飛びつくわけで、新しいチェーンも次つぎに出てきている。 そんなことから最近は、ラーメン店をやるのなら、どこかのチェーンに加盟しなければいけないのではないか、と考える人たちが増えているようだ。
もちろんそういう人たちも、昔からラーメン店は生業店の代表でもあることは知っている。 いまも生業店のほうが圧倒的に多いことも、たぶん知っている。
それでもチェーン店に目が向いてしまうのは、外食業全体のムードとしてあるチェーン店信仰に毒されているからである。 チェーン店に加盟しさえすれば、簡単に成功できると思い込んでしまうわけだ。
たんなる思い込みにすぎない。 というより、そういう発想で個店をオープンしても、たぶん負ける可能性のほうが高い。
なぜなら、そういう人はなんとなくチェーン店のマネをするだけで、個店のよさというものを理解していないからである。 よさを知らなければ、お客にアピールすることなどできない相談だ。

だから、成功できない。 成功できないのはチェーン店が強いからではなく、自分が弱すぎたためなのだ。
チェーン店には、同一資本で展開しているレギュラーチェーンと、加盟者(フランチャイジー)に対して経営ノウハウを提供することで店舗数の拡大を図っていくフランチャイズチェーン(契約チェーン)とがある。 一般に、脱サラや転職でオープンするというのは後者のフランチャイズチェーンに加盟しての話である。
いずれにしても、チェーン店の基本は、標準化、単純化、専門化の3つで、ラーメン店はその意味で、チェーン化にまことに都合のいい業種といえる。 では、チェーン店は本当に、個店の脅威なのだろうか。
いまチェーン店の3つの基本を挙げたが、そのうちの2つの要素である標準化と単純化はたしかに、お店をやる側にとっては大きなメリットといえる。 まさに、本部によるノウハウの提供ということなのだが、問題は、そのノウハウの中身である。
といっても、私は別に、チェーン店を否定したいのではない。 チェーン化は飲食ビジネスのひとつの方法論であり、成功すればとてつもないビッグビジネスになるという夢もある。
いまのところ優良チェーンといえるチェーンは、ひと握りでしかない。 フランチャイズチェーンの場合、本部はノウハウ使用料として売上げの何%かのロイヤリティーを加盟者から徴収する。
本当に確実に成功できるだけの商品と、指導するシステムとが確立されていれば、ロイヤリティーは正当な対価になる。 現実には、そのノウハウ自体に何らかの問題を抱えているチェーンがある。
チェーン本部としては、ロイヤリティーと食材販売の量を増やすことがビジネスであり、急成長することが第一の目的だから、無理をしてでも店数を増やそうとする。 無理があるのはノウハウだけではない。
もっとも見過ごされがちなのは、立地条件という大きな問題だ。 このチェーンはひと言でいえば、成功した1号店のコピー、いわば金太郎飴である。

したがって、少なくともモデル店舗と似通った立地条件でなければ、ノウハウが通用しない危険性がある。 以上は、チェーン店の構造的なウイークポイントだが、個店はこれらの問題点とはまったく無縁である。
また、標準化はチェーン店をやる側にとってメリットだといったが、お客の側から見たらどうなるだろう。 たしかに、同一のチェーン店であれば、いつ、どこのお店に入っても同じ味のはずだから、お客にとっては安心感につながる、ということはいえる。
また、実際そういう価値観のお客もいる。 そういうお客はほんの一部分であって、チェーンの画一的な味では飽きてしまう、というお客はかなりいる。
これも確かである。 新商品の開発や導入もできないから、お客にとっては面白みのないお店になってしまう。
味ばかりではない。 サービスについても、同じことがいえる。
飲食店がこれだけ増えているいまは、お店の規模の大小にかかわらず、地域との密着度が成功の大きなポイントになっている。 場合によっては、お客の細かい注文にも応えていかなければならない。
ところが、チェーン店の場合は、営業方針が本部の命令で統一されているから、例外的な対応はできない。 始めたら、チェーンではなくなってしまうからである。
お客にとって一番大事なことは、自分が求めているお店かどうか、ということだ。 他店では食べられないラーメンこそが求められている。
よく店数が多いと商品がすぐれていると思う人がいるが、そんなことはない。 店数が多ければ当然、最大公約数的な味づくりを余儀なくされるし、個性とか独自性という点で、チェーン店は個店の敵ではない。

また、温かで柔軟な対応は、個店でこそできるサービスだ。 したがって、どんなチェーン店も、恐れるに足りないのである。
そういうお店もたくさんあるが、繁盛とは無縁のお店ばかりだ。 どうしてかというと、お客が満足していないからである。
ラーメンというモノはたしかに売っているが、お客の満足という付加価値は売っていない。 この「付加価値」がなければ、まっとうな飲食店とはいえないのである。
では、飲食店としての付加価値とは何なのか。 ふつうは飲食業の三要素として、次のように表現している。
飲食業は商品。 サービス.雰囲気の総合力の勝負。

飲食業とはひと言でいえば、飲食というモノを通して、お客に「満足」という付加価値を売るビジネスである。

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